SixSense、半導体製造のインテリジェントオートメーション推進に向け850万ドル（約12.8億円）を調達

SixSense、半導体製造向けインテリジェントオートメーションの加速に向け850万ドル（約12.8億円）を調達

シンガポール発の先進AI企業SixSenseは、シリーズAラウンドで850万ドル（約12.8億円）の資金調達を実施し、累計調達額は1,200万ドル（約18億円）に達しました。今回のラウンドは、Peak XVのSurgeが主導し、同社が開発する半導体業界向けのインテリジェントオートメーション・プラットフォームの導入拡大を目的としています。

SixSenseは、半導体製造の現場で発生する膨大なデータをリアルタイムで活用できないという根本課題の解決に取り組んでいます。同社のプラットフォームは、欠陥の予防、歩留まりの改善、業務効率の向上を支援し、製造現場の高度化を後押ししています。

品質管理の断絶を解消——業界が直面する構造的課題

SixSenseは2018年、アヴニ・アガルワル氏（CEO）とアカンクシャ・ジャグワニ氏（CTO）によって創業されました。両氏は、精密さが求められる半導体業界において、依然として多くの品質管理プロセスが手作業に頼り、工程全体が分断されているという非効率性に着目しました。

とりわけ課題となっていたのは、既存のシステムが単にデータを可視化するだけで、傾向分析や根本原因の特定といった洞察を導く作業が、現場のエンジニア個人に委ねられている点です。こうした属人的かつ非連携なプロセスは、技術の複雑化が進む現代の製造ラインにおいて、柔軟な対応力やスケーラビリティの妨げとなっていました。

現場主導のAI活用を可能にするノーコードプラットフォーム

SixSenseが提供するプラットフォームは、工場内の生産データをリアルタイムの知見へと変換するAIベースのソリューションです。早期警告、欠陥の自動検出、根本原因分析といった機能を備え、品質問題が深刻化する前に対処できる仕組みを提供しています。

最大の特長は、データサイエンティストではなく、現場のプロセスエンジニア自身が使いこなせる設計にあります。ノーコード（プログラミング不要）での操作を可能にしており、高度なAIモデルを2日以内に実運用へ導入することができます。これにより、SixSenseは製造現場に即した、実用性と拡張性を兼ね備えたプラットフォームを実現しています。

実績に裏付けられた導入効果とグローバル展開

同社のプラットフォームは、GlobalFoundriesやJCETといった世界的な半導体企業に導入されており、すでに1億個以上のチップがSixSenseの技術で処理されています。導入企業からは、「生産サイクルの30%短縮」「歩留まりの1〜2%改善」「人手による検査工数の90%削減」といった定量的な成果が報告されています。

今後SixSenseは、米国、インド、ベトナムなどが推進する半導体の国内生産強化の動きを追い風に、AIを前提とした次世代型工場＝“AIネイティブ”な製造環境への展開を本格化させます。すでにシンガポール、マレーシア、台湾、イスラエルといった地域で実績を積んでおり、今後は米国市場への進出を戦略的に進めていく方針です。

まとめ：AI活用の主役は現場へ——製造業の構造転換を示唆

今回の資金調達は、SixSenseがスタートアップとして成長していること以上に、製造業全体が大きな転換期を迎えていることを象徴しています。AI技術の現場導入が加速する中、もはや専門知識を持つ一部の技術者に限定されたものではなく、現場のエンジニアが自ら使いこなす“AIの民主化”が本格化しつつあります。

また、サプライチェーン再編の動きが広がる中、AIによるインテリジェントオートメーションは、新設される工場の生産性や競争力を左右する重要な要素となりつつあります。データの「可視化」から「リアルタイムでの予測・予防」へと価値の焦点が移る今、SixSenseの取り組みは、半導体業界にとどまらず、あらゆる製造業において今後の競争戦略を考える上で重要な示唆を与えています。

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