
Conversion、エンタープライズ向けAI自動化推進のため2,800万ドル(約42億円)を調達
AIマーケティングのConversion、エンタープライズ向けインテリジェントオートメーション推進のため2,800万ドルを調達
AIマーケティング領域の先駆企業であるConversionは、シリーズAラウンドで2,800万ドル(約42億円)の資金調達を実施したことを発表しました。本ラウンドはAbstractがリードし、True VenturesおよびHOF Capitalが参加しています。
今回の調達により、ConversionはAIによるインテリジェントオートメーション(高度な自動化)を中核に据え、従来型のマーケティングプラットフォームに本格的に挑戦する体制を強化。カリフォルニア大学バークレー校出身のニール・テワリ氏とジェームズ・ジャオ氏によって設立された同社は、特に中堅企業におけるマーケティング業務の実行手法と、複雑なワークフローの再設計を目指しています。
旧来のマーケティング基盤が抱える構造的な課題
従来、多くの企業は既存のマーケティングオートメーションツールに依存してきましたが、これらの仕組みはデータ活用やワークフローの柔軟性において多くの制約を抱えています。Conversionは、こうした根本的な課題に着目し、アーキテクチャの中核にAI自動化を組み込んだ設計を採用。後付けのAI機能ではなく、はじめからAIネイティブな構造で開発されたことで、リードの精緻なスコアリングや、大規模かつ個別最適化されたフォローアップの自動化といった、高度なマーケティング機能を実現しています。
創業者の課題意識から生まれた実用的なプロダクト
Conversionの構想は、創業者自身の体験に根ざしています。学生時代、テワリ氏とジャオ氏は自らのプロジェクトのために、HubSpotの自動化機能を拡張する社内向けツールを独自に開発。このツールの将来性に着目した二人は、中堅企業のマーケティング責任者160名以上にヒアリングを実施し、市場からの強いニーズを実感しました。
その反応を受けて、200万ドル(約3億円)のシード資金を調達。当時19歳だった両氏は大学を中退し、事業にフルコミットする道を選びました。
ARR急成長を支える、明確なターゲット戦略
Conversionは現在、ARR(年間経常収益)が1,000万ドル(約15億円)に迫るペースで急成長中です。この成長を牽引しているのは、既存のレガシーシステムからの移行を目指す中堅企業層です。
実際、同社の顧客の約90%が、既存のマーケティングアプリケーションを置き換える形でConversionを導入しており、より柔軟で強力なソリューションへの明確な需要があることが示されています。Conversionは、初期導入層であるスタートアップではなく、すでに運用体制を持つ企業を明確なターゲットとして位置づけ、的を絞った市場戦略を展開しています。
激戦市場での差別化と資金力
マーケティングテクノロジー市場は、HubSpotやAdobe Marketo、Salesforce Pardotといった大手に加え、JasperやWriter AIなどの新興AIネイティブ企業がしのぎを削る競争の激しい領域です。
その中でConversionは、旧来型プラットフォームの限界を突く明確な戦略を掲げ、今回の調達により累計3,000万ドル(約45億円)という十分な資金基盤を確保しました。同社は単なる機能拡張ではなく、業務構造そのものを再設計することで、今後のマーケティング業務において独自の価値を提供しようとしています。
まとめ:業務プロセスの再定義が競争優位を生む時代へ
今回の資金調達は、単なるスタートアップの成長物語ではありません。Conversionの取り組みは、業務用ソフトウェアにおけるAIの「本質的な統合」が進みつつある時代の象徴的な動きです。
従来のように、既存システムにAI機能を“付け足す”だけでは限界があることが、現場レベルで明らかになり始めています。業務の中核にAIを“ネイティブ”に組み込むという発想こそが、次世代の競争力の源泉となります。
また、Conversionの事例は、既存プラットフォームが築いた市場であっても、顧客の抱える根深い不満や非効率に向き合うことで、イノベーションの余地が十分にあることを示しています。日本企業にとっても、自社の業務プロセスを再点検し、既存の仕組みの限界にこそ新たなビジネスチャンスが潜んでいる可能性に目を向けることが求められています。
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