
アマゾンの新ロボット倉庫、人手への依存も依然として大きい
米ルイジアナ州シュリーブポートに誕生した約28万平方メートルの配送センターは、大規模物流における自動化の限界を示す
アマゾンは、これまでで最も自動化された倉庫をオープンしました。しかし、その最先端のロボティクスや人工知能(AI)技術の裏側では、依然として数千人規模の従業員による人手に頼っています。
この巨大EC企業は、ルイジアナ州シュリーブポートに完成した延べ面積約28万平方メートル(300万平方フィート)の施設が、フルフィルメント(注文処理)プロセスのあらゆる段階で自動化とAIを導入した初の倉庫であると発表しました。
この施設は、何百万もの追加注文が物流ネットワークを駆け巡るホリデーシーズンの最中にオープンされました。オンライン注文の配送スピード向上を目指し、企業が物流拠点への自動化技術の導入を拡大している実態を示しています。
一方でこの大規模な倉庫は、アマゾンを含む企業が、過酷で反復的な作業をロボットに任せるうえで直面している課題も浮き彫りにしています。
アマゾンは、ここ数カ月で1,400人以上をシュリーブポートの配送センターで採用しており、最終的には約2,500人を雇用する計画です。従業員は、注文品のピッキング、トラックの積み下ろし、ロボティクスシステムの管理などを担当します。
倉庫業界では、自動化が急速に進んでいます。商品を持ち上げて梱包するロボットアームや、棚を移動させるディスク型のロボットなどが導入され、一部の企業では完全自動化の施設も稼働しています。イギリスのオカド·グループは、人が通る通路すら不要なグリッド状の仕組みを活用し、ロボットのみで商品を動かす施設を構築しています。
これらの技術の導入目的は、オペレーションの高速化、人件費の削減、そして残る人間作業の安全性向上です。
アマゾンにとって、安全対策は非常に重要な要素だとしています。
同社は近年、施設内での労働環境をめぐって、連邦·州レベルでの調査対象となってきました。米労働統計局によると、2023年の米国内における倉庫業界の労働災害·疾病発生率は、全業種平均(100人あたり2.4件)を大きく上回る、100人あたり4.7件という高水準でした。
アマゾンはここ4年間で、安全性の向上に向けた技術投資を進め、一定の成果があったとしています。
しかし一方で、従来の倉庫業務の一部は完全自動化が難しいという現実もあります。その理由の一つが、アマゾンが扱う商品の多様性です。犬用おもちゃからトースターまで、400万種類以上のサイズも重さも異なる商品を取り扱っているため、柔軟に対応できる自動化システムの構築が困難だといいます。
リサーチ企業「インタラクト·アナリシス」の倉庫自動化部門マネージャー、ルーベン·スクリーブン氏は次のように述べています:「何を取り扱うかわからない状態では、それに対応できる柔軟な自動化システムの構築は非常に難しいのです。」
人間であれば、物が詰まったコンテナを覗き込み、目的のアイテムを視認し、どのように持ち上げて扱えばよいか即座に判断できます。たとえそれがシャンプーのボトルであろうと、セーターであろうと。
アマゾン·ロボティクスのチーフ·テクノロジスト、タイ·ブレイディ氏はこう語ります:「人間の手の触感による把握力、状況認識能力、脳による知覚力に匹敵するものは、まだ存在しません。」
新施設では、吸盤とAIを搭載した「スパロー」など、3種類のロボティックアームが導入されています。この装置は色·形·サイズなどの特徴から物体を認識できるよう設計されています。
ただし現時点では、顧客の注文内容に応じて自動でコンテナから商品を取り出すところまでは実現していないとブレイディ氏は説明します。「それはロボティクス界における“聖杯”のような存在です。今はまだ、その段階には至っていません。」
現在のプロセスでは、ロボットが商品が入ったコンテナを人間のもとに運び、人間がその中から注文商品を選び出し、トートボックスに入れ、それをコンベヤーベルトに流すという手順を踏んでいます。
また、トラックの積み下ろしや、特殊なサイズ·形状の商品の梱包も、人間が担当します。
アマゾンによれば、この施設での多くの業務は、ロボットとの連携や管理を伴うものであり、従来の倉庫業務よりも高賃金かつ安全性の高い仕事であるとしています。
ブレイディ氏は、「最新の自動化を導入した倉庫では、1日に最大100万件の注文処理が可能になる」と述べ、処理量の増加とともに人間による対応が求められる“例外処理”も増えると指摘しています。
アマゾンは2025年中に、このシュリーブポート施設で導入された一部の技術を、全米の他の倉庫にも展開していく計画です。